節税対策の全容を掴みたい!【財産の分類から逆引き】
「相続税の節税……いざ調べてみると、色々なアプローチがあるんだな。
項目別にざっと分類するなら、全体としてはこんなものか?」
今回、相続税の節税対策について調べていたのは、40代の一般男性・E太さん。
首都圏のベッドタウンに自分の家庭を持ち、都心の職場へ通勤している働き盛りです。
几帳面ながら要領の良いタイプで、能率を考えて冷静に動けるため、同期からも頼りにされています。
今のところご両親は健在で、自分自身の死後を見越して準備をしていたというわけでもありません。
そんなE太さんが節税に興味を抱いたきっかけは、『税制改正』と『相続税』の語句が並ぶ見出しでした。
時事に気を配る習慣から斜め読みしていたニュース項目の中に、たまたま紛れていたのです。
「税制改正か……今だってあれこれ税金を取られているのに、これ以上となると御免こうむりたいぞ。
もし資産の保護やこれからの運用方針に影響するなら、知識を備えておくに越したことはなさそうだ」
税制改正(平成27年1月1日施行)の影響を再確認
情報の正確性や細部までの網羅を考えれば、専門家の監修した書籍を手にとった方が確実です。
ただ、著書は執筆から出版までに多くの過程を要し、最新情報の反映にはラグが生じる場合もあります。
「内容はきちんと吟味する必要もあるだろうが、即時性の面では、インターネットが便利だな。
空き時間を利用して、手軽なところから知識を得ていこう」
もともと話題作りの一環として、目についた時事ネタは関連情報まで掘り下げてストックしていたE太さん。
すぐに税制改正の内容をまとめたページへたどり着き、相続税に関係する変更があったことも把握しました。
「なるほど……。どうやらこの様子だと、相続税の納税義務が発生する割合は、改正前より上昇しそうだ。
資産家に対しては税率が引き上げられていたり、以前の試算から税額が変動するケースもあるかもな」
E太さんは持ち前の器用さで、税制改正の概要を手早く頭に入れたようです。
この『Freeな相続』で解説役を任されている、
コザクラインコのサクラです。
解説助手を担当している聞き上手なパートナーは、
ベルジアン・グローネンダールのクロウくん!
相続や相続税に関する情報を親しみやすい対話形式で
紹介していきます。どうぞよろしくお願いします!
さっきE太さんが調べていた『税制改正』の内容は、
過去の紹介記事に解説をしている部分があります。
もし気になったら、参考にしてみてください。
Freeな相続 > 税制改正(平成27年1月1日施行)の影響とは?
初心者を主人公にした、基礎知識から始まるお話もあります。
ちょっと自信のない人はこちらの記事もどうぞ!
Freeな相続 > 家族のためにも考えよう、実は身近な相続税のこと
サクラくんとのおしゃべりよりもかしこまった口調です。
普段の解説は、今よりずっとくだけた感じになるので、
読んでくださるみなさんも気を楽にしてくださいね!
『相続税』を得意とする専門家に頼ろう
E太さんは税制改正の概要を掴むと、そこから更に「自分ならどう動くべきか?」と思考を広げました。
急を要する内容でなくとも、知っておくことで、将来有利に運べる場面が出てくるかもしれないからです。
仕事も私生活も充実しているE太さんの念頭には、『時間は価値あるもの』という意識があります。
合理的に考えて、やはり「最後はその道のスペシャリストに相談するのがベストだろう」との結論に。
「相続税か……税の制度や実態について詳しい専門家となると、やっぱり『税理士』あたりか?
しかし一緒くたに『税』と言っても、企業の税務と相続じゃ勝手も違うし、実際はかなり多岐に渡るぞ。
何より、今回の税制改正のような変化にも、タイムリーに対応してもらえるかどうかがポイントだ」
最終的な結果の良し悪しを左右する一因として、頼りにする専門家の『得意分野』にも目を付けたE太さん。
「あらかじめ全体像を把握しておけば、そこから今後自分がやるべきことも見えてくるはずだ。
専門家に相談する時にも効率よく話を運べるよう、もう少し踏み込むとするか」
ひとつ目を付けたら鋭く切り込んでいくね。
ぼくなら、同じ肩書きを持った専門家が並んでいたら
「プロなんだから、頼りになるに決まってる!」って、
深く考えずに手近な相手に任せちゃうところだけどな~。
実はけっこう的を射ていると思うんだよね。
『相続税』と『税理士』を例に見てみようか。
- 年間の相続発生数(=死亡者数)
……平成25年度は約125万 - 年間の相続税課税件数
……平成25年度は約5万、相続全体の4%程度 - 全国の税理士の人数
……平成27年3月末日付けで約7万5千
専門家である税理士の人数のほうが多いぞ……!?
ってことは……単純に考えると、1年のうちに一度も
相続税の業務を請け負わない税理士が出たとしても
おかしくないんじゃないかな?
課税件数よりも多く見積もれるかもしれないけれど。
例えば、税務署からのチェックで問題が起きなかったかは
実際に課税が発生したケースから活かせる部分もあるよね。
そういった積み重ねから、同じ税理士を名乗っていても
これまでの相続税に関する経験が豊富か否かによって、
大きな違いがあると思っていいかもしれないな。
「最大限できる」までの間には、それなりの幅があるのか。
もちろん、プロはプロだから「最低限」のラインだって
保証されていると思うけれど……。でもどうせなら、
やっぱり「最大限」レベルの専門家に相談したいよね。
相続税の基礎控除額が引き下げられる前の統計だよ。
これから課税件数が増えたら、どうなると思う?
需要の増加によって、これまではあまり相続税を扱って
こなかった税理士にも相談が持ち込まれるようになるよね。
不慣れながらも対応していく専門家もいるんじゃない?
任せられれば、効果が大きく違ってくるかもしれないのか。
E太さん、しっかり『得意分野』まで見極めて探してね~!
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また、土地家屋調査士、測量士、建築士など。
相続財産の構成から探ってみよう
E太さんは最初に、一般的な相続財産の構成を調べることから始めました。
「単純に考えて、母数の大きな部分にかかる税金から削減できれば、見込める節税額も
大きくなるんじゃないか? 切り崩しやすい部分から取り掛かってみるとしよう」
ここで参考にしたのが、国税庁から平成26年12月に発行された統計資料です。
国税庁 > 平成25年分の相続税の申告の状況について【PDFファイル/655KB】
『不動産』の節税対策
統計を見ると、一番割合の高かった項目は『土地』、逆に低かったのは『家屋』でした。
「へぇ。普段はそこまで考えることもなかったが、相続財産としては『土地』が大きいんだな。
それに比べて『家屋』……住宅や建物は、市場での意識よりも安くなるのか?」
“夢のマイホーム”と称され、勤め人が何十年もローンを組んで購入するはずの住宅。
財産としての割合が一番小さなことを、Eさんは少々意外に思ったようです。
「相続財産の分類上、単体で最も大きな項目から探ってみるつもりだったが……
家屋も土地とセットみたいなものか。『不動産』関連を調べていこう」
『現金・預貯金』の節税対策
土地・家屋に続き、他の項目でも相続税の節税について調べを進めるE太さん。
国税庁の資料にあった相続財産の金額の構成比を見直すと、推移の変動も目につきました。
平成6年度から25年度まで、『土地』が構成比の1位であることに変わりはありません。
しかし、相続財産の60~70%であった当初と比べると、平成20年ごろには40~50%程度へ。
『土地』の占める割合は、徐々に低下してきている様子がうかがえます。
「構成比率が増えてきているのは……『現金・預貯金等』と、『有価証券』か。
とりわけここ20年の間で、現金・預貯金の比率にはかなり安定した増加傾向が見えるぞ」
E太さんは、構成比率の伸びが目立つ『現金・預貯金等』に注目を移したようです。
「ありのままの数字で把握できるから、『土地』と比べて専門知識はなくていい。
方向性さえ意識できれば、動かしやすい財産でもある……これは要チェックだな」
『非上場株式』の節税対策
現金・預貯金の節税対策をひと通り眺めたE太さん。さてさて、お次は……?
相続財産の構成比のうち、『現金・預貯金等』に続いて増加傾向にあったのが『有価証券』でした。
「有価証券の占める割合も、20年ほど前と比べれば2倍近くになってるのか。
最近は資産家ってほどじゃなくても、株券なんかを保有している層が増えてるのかもな」
E太さん自身は、今のところ起業家でも投資家でもなく、巨額の有価証券など手元にありません。
ご両親の蓄えについても、細かい構成を把握しているわけではないようです。
「そう言えば、初めに調べた税制改正の中にも『非上場株式』の単語を見かけた気がするぞ。
確か『中小企業の事業承継がスムーズにいくように』なんていうお題目だったか?
わりと最近の情報だし、この機会に軽く把握しておけば、話の種になりそうだ」
その他の節税対策
「漏れのないように順序立ててたどってみたが、財産の分類にとらわれない対策もあるはずだ。
ただ、あまり細かく追うとなると、やはり専門的なノウハウを前提とした方法になるか……?」
おやおや、どうやら本人はまだ納得がいっていないようですね。思考に見落としがないか、
一度立ち止まって振り返ります。けれど、E太さんは当初に定めた目標も見失っていません。
相続税の節税対策について調べ始めたのは、全体像を大まかに把握した上で、
自分に必要な方針の確認へ繋げ、『効率よく相談する下地づくり』をするためでした。
「……いや、これ以上の仔細は必要に応じてだな。相談する段階で、目的を告げて尋ねればいい。
相続税の経験を積んだ税理士かどうかに気を付けて、詳しいことはその道のプロに任せよう」
残りの対策については、一般的に知られている手段を確認して終わりにすると決めたE太さん。
独力でむやみに時間を費やすより、専門家から適切なアドバイスをもらう方針に切り替えた様子です。
「大まかに存在だけでも知っておけば、相談前の下準備としては問題ないレベルじゃないか?
これでちょうど区切りもついてすっきりしたし、ひと通りは網羅できそうだ!」