家族のためにも考えよう、実は身近な相続税のこと【2/5】
2:軽々しく言えない・聞けない、大きなお金のハナシ
今回、お話の中心になるのは、茨城県阿見町にお住まいの50代女性・C子さんです。
実家の家族構成は、80代前半になるご両親のA郎さんとB代さん、少し歳の離れた弟のD介さん。
それから自分の家庭として、結婚した夫と、既に成人した2人の子がいます。
C子さんは、小さな頃から面倒見の良い長女として、家族の中でも落ち着いたしっかり者でした。
結婚後は夫を支え、我が子も無事に育て上げてからは、80歳を越えて病気を抱えるようになった
父・A郎さんや、それを心配する母・B代さんのことにも気を配っています。
そんなC子さんの息抜きの場は、子育てを通じて知り合った同世代とのお茶会です。
ある日のこと、お喋り好きな友人たちから、ちょっと気になる話を耳にしました。
小耳に挟んだ噂1:交通インフラ整備で、その周囲も開発が進む?
「数年前につくばエクスプレスが開通した時もそうだったけど、今度は圏央道で開発が進んでるみたいね」
「そうそう、あの頃は新しいお店やマンションがあちこち建てられたっけ」
「やっぱり、交通の便が良くなると、その付近も活性化の波に乗ろうとするものね~」
C子さんは相槌をうちながら、父・A郎さんの持っていた土地も、ちょうど圏央道に引っ掛かっていたと思い出します。
人が出入りしないような場所で、これといった使い道もなく、手放すこと自体は気にしていない様子でした。
「公共事業って、整備に必要な土地はまとめて確保して、所有者には後から土地を再分配するじゃない?
場所によっては後々、開発の影響で元の土地より価値が上がることもあるって話よ~!」
「えっ、そうなの?」「あら、いいじゃない! 羨ましいわ~」
あくまで他人事として、盛り上がる友人たち。
一方、C子さんはというと、降って湧いた話に驚いたのでしょうか?
周囲の勢いとは裏腹に、思わず口が止まってしまいました。
小耳に挟んだ噂2:開発の影響で、土地が値上がりしたら?
うちが持っていた土地は今、どうなってるのかしら……?
C子さんが頭の中で考えている間にも、友人たちの噂話は広がっていきます。
「そう言えば、業者の人がマンションを建てないかって、地主さんのところへよく営業に訪ねて来てたって、
噂だけは聞いたことがあるわ。つくばエクスプレスの頃だったけど」
そこで堅実派のC子さんも気を取り直し、
「へぇ、便利になって入居希望者の増加が見込めるから建てどきなの? でも、かなり大きな買い物よね」
と口を挟みました。
「それがね、さっき土地が値上がりするって言ったでしょう?
整備を終えたままで更地にしておくよりも、相続税対策になるからって、すすめられるんですって!」
またまたびっくりのC子さん。父であるB郎さんは確かに高齢となり、持病も抱えています。
けれど家族としては、相続などまだ先のことだと思っていたい気持ちがありました。
小耳に挟んだ噂3:値上がりした土地には、相続税対策が必要?
地域の活性化や土地の値上がりなど、景気のいい噂で盛り上がっていた友人たち。
しかし、税金や法律の話題となると、深く掘り下げるのはあまり乗り気でない様子です。
「いきなり相続税だなんて言われても、結局はセールストークよね? 難しい話で煙に巻かれそうだわ」
「放っておいて税金を取られるより、って考えじゃないの?」
「継続して家賃収入があれば嬉しいけど、そんなのポンと建てられること自体がすごいわよね~!」
――話はそのまま、自分たちが普段いかに倹約しているかなど、日常生活の笑いぐさに流れていってしまいました。
元々が又聞きのような噂話でしたし、家族の財産に関わってくるかもしれないとはいえ、
気晴らしの席で蒸し返せる雰囲気でもありません。
だからこそ、C子さんの心には、ちょっとした不安の種として残ることになりました。
こういう噂話や、軽い世間話の流れで触りだけ耳にすると、
余計にもやもやしちゃうんだよね。
「うちも当てはまってたら、どうしよう?」って。
いつもは割と落ち着いているC子さんだけど、
急な展開続きで驚いたせいか、ペースを崩されちゃったのかな。
お喋り上手のサクラくんだったら、上手く訊けた?
自分の家の具体的な財産や資産についてって、
安易に口にするのは気おくれしちゃうんじゃないかな。
僕は散歩中に誰かと会った時も、軽く挨拶をするくらいだし、
よくわからないや。
おやつの話を、わざわざ出先で散歩仲間に持ちかけたりする?
おすすめだよって同じものを紹介するとか、
家に招いて一緒に食べないか誘うとか、
最初から自慢話をしたいだけならともかくさ。
とりわけ隠そうってつもりでなくても、
場にそぐわない話題だから出しにくいのか。
C子さんも、はじめから「財産について相談できる場」で
話していたのなら、気兼ねなく尋ねられただろうね。
タイムリーな話題を仕入れることはできても、
自分自身が行動するか否かを見極める必要のある時は、
聞きかじりの話だけじゃあ判断材料として不充分だもの。
でも混乱から立ち直ったら、心配事をそのままにはしておけないはず。
C子さん、1人で気負いすぎないといいけど。
噂話のまとめ
上がるとしたら……思わぬ相続税がかかることになるかも?
そう言われたなら、「詳しいことはわからないけれど、
もし税金を取られることになるなら、できるだけ損をしない
ようにしたい」とお考えになるのは自然なことです。
「このままにしておいていいのか?」と、不安を抱かれた時。
あなたの周りには、具体的なお金の話について、
詳しい内容を相談できる相手がいらっしゃるでしょうか?
解説ページ索引(全5回)
- 〈導入〉税制改正と、開発・区画整理による地価上昇の影響
- 〈小耳に挟んだ噂〉軽々しく言えない・聞けない、大きなお金のハナシ【このページです】
- 〈基礎知識〉相続と税にまつわる基本的なこと ~まずは下調べ~
- 〈詳細確認〉相続税って、他人事じゃないの? ~少し踏み込んで~
- 〈実践〉結局のところ、自分にとってのベストな方法とは?