相続時精算課税を利用する時の注意点

贈与税の一種に「相続時精算課税」という制度があります。

これは贈与した財産について、将来相続税として課税することとし贈与時点では贈与税を課税されないようにするというものです。

贈与した財産の価額から2,500万円まで控除でき、それを超えた金額については一律20%の贈与税を納めます。またここで納めた贈与税は改めて相続税として課税された金額から控除することができます。

将来相続税として課税するため、受贈者は推定相続人である必要があります。またこの規定を適用するには贈与税の申告書に戸籍謄本などの書類を添付し、3月15日までに提出する必要があります。

高負担になる贈与税を回避できるため利用を勧める場合も多いですが、その反面注意しなければならない落とし穴もあります。

 

・相続があった時にその財産は無くなっている場合

贈与された財産は相続開始時に相続税として課税されるため、その時点で既に財産が無い場合も考えられます。

その場合財産は無いのに相続税を負担することになり、納税が困難になることがあるかもしれません。

 

・贈与から相続開始時まで長い時間があく場合

数十年前に贈与されたがこの規定を適用したのを忘れてしまい、その財産が相続税の申告から漏れてしまうかもしれません。

 

・特例の適用や物納の対象外になってしまう

小規模宅地等の特例など相続を原因とした場合にのみ適用される特例などが使えません。また現金納付が困難な場合に利用できる物納の対象外となってしまいます。

 

・相続税として課税されるという認識が薄い場合

贈与税が課税されないということに注目されすぎて、将来的に相続税として課税される認識が薄れてしまうことも。また他の相続人に基礎控除以下と思われている場合に精算課税の財産があったりすると他の相続人の相続税の負担額が増えてしまうことも。

 

・贈与を原因としての所有権移転には不動産取得税が課税

相続の場合には不動産取得税は課税されませんが、贈与の場合には課税されます。また名義変更時の登録免許税も贈与の方が高いです。

 

・贈与時の価額で相続財産に加算するため

不動産などで相続開始時に低い評価額でも、贈与時の価額で加算する必要があります。相続開始時に評価額が上がっていれば得をするが、下がっていれば損をすることになります。ということは上がりそうな財産を今のうちに贈与した方がいいということです。

相続時精算課税をご利用の際はご注意ください